無題

 

 

ここ数年、私の“自担”である渋谷すばるは今まででは考えられないほどにアイドルだった。

 

 

客席に笑顔を見せ、手を振り、パートを忘れてしまうほどにファンサービスをしていた。カメラ目線も沢山してくれて、難しい振り付けも頑張って踊ってくれていた。ああ、アイドルとして生きようとしてくれている。私たちの思いがやっとすばるくんへ届いた。アイドルという職業に折り合いをつけてくれた。

 

勘違いだった。

全て伏線だった。

嵐の前の静けさ。まさにその通りだったのかもしれない。私たちも本当は何か分かっていたのに、見ないふりをしていたのかもしれない。

 

すばるくん、

担当呼びが嫌いなのにずっと渋谷担と名乗っていてごめんね。

ダンスが嫌いなのに踊る姿を望んでごめんね。

ファンサービスを貰って喜んでごめんね。

団扇を持ってごめんね。

すばるくんの音楽を理解してあげられなくてごめんね。

 

私たちはアイドルを選べる立場にある。アイドルは常に選ばれる側だ。彼の音楽が理解できないなら別の誰かを応援すればいい。彼の考えを受け入れられないなら別の誰かを選べばいい。

 

無理だった。どうしてもわたしはすばるくんじゃないとダメだった。わたしはすばるくんに救われてしまった。選ばれてしまった。初めて見つけた時から「お前は俺のファンだ」と言われたような気がしていた。

 

 

すばるくんへ

あなたを追いかけて6年になります。中学一年生、12歳だったわたしは高校を卒業して18歳になり、今年から社会人として働きます。あなたに沢山会うために上京を決めました。

今はまだ何も信じられない。眠るたびに夢でありますようにと願ってしまうし、起きるたびに現実に戻ってしまったと涙が溢れる。大好きだったはずのあなたへ負の感情が湧いてしまう。行かないで。捨てないで。エイトじゃ叶えられない夢なの。

それでもどうしようもなく大好きです。嫌いになんてなれない。わたしは今までどんな時もあなたに救われたから、わたしに今出来ることはどんなあなたも愛すること。あなたの望むファンで在ること。あなたが欠けた未来を、生きること。

「一生あなた達のアイドルです」と言ってくれてありがとう。手付かずの夢に今まで手を付けずにいてくれてありがとう。エイトでの活動を、幸せだったと言ってくれてありがとう。

最後までファンに夢を見せ続けてくれたすばるくんは悲しいほどにアイドルでした。

すばるくん、本当にありがとう。大好きです。そして、あなたの望むファンでいられなかったこと、本当にごめんなさい。じゃあどんなファンを望んでいたかなんて分からないけれど、きっとわたしは“本当のファン”ではなかった。もしもわたしが死んだら、どこかの世界線で生きている「関ジャニ∞ 渋谷すばる」を探しに行きます。次の人生でもあなたのファンでありたい。大好きです。